まず押さえたい「見分け方」の全体像
シロアリ被害は「音・手触り・見た目・時期・場所」の五つで総合判断します。木を叩いたときの軽い音、指で押したときの沈み、塗装の波打ちや壁紙の膨れ、羽アリの出現時期、そして玄関框や浴室周りなどの発生しやすい場所を関連づけて考えるのがコツです。単独のサインより、複数のサインが同時に出ていないかを落ち着いて確認しましょう。
音と手触りで疑う
・柱や敷居を軽く叩くと「ポコポコ」と空洞音
・木口や表面を指で押すとスポンと沈む、もろく崩れる
・床の一部がたわむ、歩行時に沈みを感じる
これらは内部の食害で木材がスカスカになっている典型です。
見た目の異変を拾う
・基礎や壁に土の細いトンネル(蟻道)がある
・壁紙の局所的な膨れ、塗装の浮き・割れ
・窓枠や巾木の線に沿った土汚れや泥の筋
・室内外で羽だけが大量に落ちている
一つでも当てはまれば、他のサインとの重なりを必ず確認します。
羽アリで見分ける:クロアリとの違い
羽アリの正体を見誤ると判断を誤ります。体のつくりと出現のタイミング、行動の仕方を押さえれば、クロアリの羽アリと区別できます。特に室内で群飛した場合は、建物内部に巣がある可能性が高まるため、観察ポイントを逃さないでください。
体の形状と羽の特徴
・シロアリ:胴体はくびれが目立たずストンと太い/翅は前後ほぼ同じ大きさ
・クロアリ:胴体はハッキリくびれる/前翅が後翅より大きい
・触角:シロアリは数珠状、クロアリは肘状に曲がる
この3点を写真に残せば、後の判定がスムーズです。
出現時期と行動
・シロアリの羽アリは湿った気候の夕方〜夜に室内照明へ集まりがち
・窓際や照明下に羽が多数落ちる/同じ場所で数日連続で見かける
・屋外だけで一過性に見た場合は、迷い込みの可能性も考える
時期・場所・量をメモしておくと、調査の精度が上がります。
家のどこをどう点検するか:手順と優先度
一気に全てを見るより、湿気が溜まりやすく被害が集中しやすい場所から順に確認します。室内→床下周辺→屋外の順で、目線・手触り・嗅覚(カビ臭)を使いながら、「土・水・木が接近している所」に注目しましょう。点検は壊さず、記録優先で進めます。
室内の重点チェック
・玄関框、敷居、巾木、勝手口周りに沈みや土汚れがないか
・洗面・浴室の床際や出入口で床のたわみ、コーキング切れがないか
・壁紙の局所的な膨れ、塗膜の波打ち、直線状の変色がないか
・室内の窓台や照明下に羽の残骸が溜まっていないか
・柱や鴨居を軽く叩いて空洞音がしないか
違和感はスマホで位置関係がわかるよう写真とメモを残します。
屋外・床下周りのチェック
・基礎と外壁の取り合い、配管の立ち上がりに蟻道や泥筋がないか
・室外機のドレンや蛇口の排水が基礎へかかっていないか
・ウッドデッキの束、フェンスの柱、薪・段ボールの直置きがないか
・花壇や盛土が水切りより高く、木部が常時湿らないか
屋外で複数のリスクが重なる場所は、優先して管理を見直しましょう。
「見分けた後」の正しい初動
発見直後は、焦って壊さず・散らさず・乾かしすぎずが鉄則です。証拠を崩すと活動範囲や侵入経路が不明確になり、対処が長引くことがあります。現状維持で記録を整え、必要な写真とメモを揃えてから専門家に相談します。
やってはいけない対応
・蟻道を剥がす、木部をこじ開けるなどの破壊
・市販燻煙剤や殺虫スプレーで追い散らす(分散・再侵入の原因)
・過度な送風や暖房で急乾燥させる(構造材の歪み・割れ)
・濡れを放置してカビを助長する
判断材料を残すことが、結果的に工期短縮と費用抑制につながります。
専門業者へ伝える要点
・発見日時、場所、写真(全景・近景・スケール入り)
・羽アリの有無、体色、出現時間帯と回数
・床の沈みや扉の建て付け不良など生活上の不具合
・近年のリフォーム歴、漏水・結露・雨仕舞いの不具合
これらを整理して共有すると、調査・施工の精度と説明の納得感が高まります。